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2024-03-10

BEARSについて

家を、家族を、町を見守ってきた大きな欅

啓蟄も過ぎたのに今頃雪景色に戻った青森です。

でも今日は時折日が差し、ふわふわと雪が舞って地面についた途端消えていきます。

春がそこまで来ていると実感しています。

さて、先日アップした「BEARS」のデザインコンセプトについてご紹介です!

長い間「町のお店」としてあり続けてきた店舗をリノベーションしたプロジェクト。

その背景と経緯、そこから生まれたデザインについて少し詳しくご紹介いたします。

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場所性と空気感を読む

緑豊かで果物で有名な町のメインストリートの交差点の一角に立ち、店は町ずっと明かりを灯してきた。

代々食品や日用品を販売してきた店舗の改修。

店の奥に住まいがつながり、奥に行くに従って傾斜している場所だった。

登りきったところには立派な欅の大木があって、そこには気持ちの良い風が吹いていた。

車の往来が途切れた瞬間に聞こえてくるのは、小さなお手製の池に注ぐ井戸水の音だった。

その水面を揺らし続けるなんとも清らかな音は、店を営む家族と共にずっと一緒にあり続けてきた。

そんな穏やかで静かなところにこの建物は立っている。

時代の流れに沿って様々な商品やサービスを提供し続けてきたこの店は単なる店ではなく、「商店」という名の地域に開かれたサードプレイス的役割を担ってきた。

その明かりは絶やすことなく、これからもカタチ変え続いていく。

新しいモノを組み込みながら。

クライアントにとって子供時代を過ごしてきた我が家は、今は新たな家族と一緒に里帰りする場所であり、これからは職場の一つとなる。

インターネットの発達により、場所を問わず仕事ができるようになり、働き方も暮らし方も複数拠点を持つスタイルが珍しくなくなった昨今。

クライアントは慣れ親しんだこの場所をその一つとして選んだ。

今までの暮らしに新たな家族の時間がプラスされる。

多くのまちの人々が出入りしていたこれまでの役割を受け継ぎつつ、新しい家族が豊かな自然を感じながらのびのびできる器をデザインした。

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新築祝の鏡に映る改装前の店舗。暖かいオレンジ店内の雰囲気は残して改修することに。

オレンジの中に入れた白い箱

長年地域に親しまれてきた店の雰囲気は極力残し、既存壁と床の色は近似色のオレンジ系に。

3方に開かれた空間はそのままに、その中に新しい白い箱を埋め込んだ。

3間×3間のワンルームにはミニキッチンと洗濯機、大きな書棚を。

3世代の家族が集まって炬燵を囲んでもちょうど良い広さ。

白い箱には大小様々な開口部を設け、三方どこからでも出入りできる。

パソコンを開いて仕事する傍らで、子供たちは内外関係なく遊び回る。

箱の中には1本の既存の柱。炬燵を置いて読書とコーヒーを楽しむ。

盆地のような気候で夏の暑さも、冬の寒さも厳しいこの地域。

そんな季節はガラス戸を閉めてオレンジの空間をバッファーゾーンとし、少ないエネルギーで高効率の温熱環境を実現する。

地域産の杉の無垢の15mm厚の床は空気をはらみ、温度変化を緩やかにする。

夏は打ち水をし、冬は炬燵。。。

完璧にコントロールされた温熱環境ではなく、季節の移り変わりを感じて暮らしていく、ある意味豊かな環境がここにはある。

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つないでいくモノに新しいモノを足して生まれるデザイン

まちに開かれた大きなガラスには、オレンジの店の中に白い箱が浮かび上がった。

時代の変化、家族の成長と共に建物は変化できる。

それぞれ多様な暮らしと働き方のカタチはどこから生まれてきたのか、それを読み解くことが大切だと思う。

そしてこれから、共に暮らし、働くクライアントご家族の新たなフェーズをどう入れ込むか。

この場所、この建物でしかできないデザインはそこから生まれてくる、と思っている。

昔からずっと続いているようなオレンジの空間が、今までと同じように常連さんを招き入れる。

クライアント家族が、ここを訪れるまちの人がオレンジと白を行き交う。

白い箱にはこれからきっと、たくさんの本や写真、絵が飾られて、いろんな色が重ねられていくだろう。

「つないでいくモノ」に「新しいモノ」を足して、「これから」が育っていく。

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人口減少、過疎化が問題視されている現在、どこにでもあるようなお話しでしょうか?

いいえどこにでもありそうで、唯一無二の家族や営みがそこにはあります。

ならばデザインも一つとなく同じものはありません。

そこにしかないデザインこれからも探し、描き、創り続けていきたいと思います。

BEARS 2023年 青森県