toggle
2020-07-23

梅雨明けはもうすぐ

コロナの終息は依然としてまだ遠く、オリンピックは始まるはずだった4連休がスタートしましたが、夏休み気分にはまだまだなれない今日この頃です。

曲屋も例に漏れず、静かに梅雨明けを待っています。

それでも、馬にとっては、急に人が増えてしまうよりも少しずつにぎわってくる方がいいのかもしれない、と

今の特別な時間を前向きに考えられるようになってきたのは、この数ヶ月のおかげかもしれません。

先日、弘前のれんが倉庫美術館が開館を迎えた記事が新聞に掲載されました。

築100年という歴史を背負ったレンガ倉庫が、

「シードル工場」から「美術館」へと新たな空間として息を吹き返しました。

これからまた長い年月を、弘前市民ともに生き続けることでしょう。

そしてそれと同じ日に、黒石の小さな図書館がドコモモに「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」として選定されたという記事も掲載されました。

ドコモモとは、20世紀の建築の歴史的・文化的重要性を見出し、その成果の記録と、建物および環境の保全を訴えるために設立された国際学術組織で、青森県では3件目だということです!

(詳しくはコチラ→http://www.docomomojapan.com)

この「黒石ほるぷ子ども館」は菊竹清訓氏の設計の小さな木造図書館ですが、こちらも築45年を越えて今もなお、子ども達に愛されている建築です。

スマホのマップを頼りに探しにいかなければ辿り着かないような、温泉が湧く小さな地区にこの建物は建っています。

通り抜ける風や光、周辺の木々と一体となった空間は、半世紀近くもの時間、ずっと子どもたちと共に生きてきました。

子どもの数が少なくなってどの地域も高齢化が進む現代です。

この建築もその姿を変えながら、きっと生き続けていくでしょう。

この図書館ができた頃、初めてこの空間で本を読み遊んだ子供達は私達と同じ世代、もういいおじさんおばさんです。

次の世代へつなげるために私達ができることは何か。。。

「つないでいきたい大切なことは何か」を考える時間をもらいました。

曲屋のプロジェクトは、地域も建物も異なるものでしたが、上記2つの建物と全く同じテーマで取組んできました。

改修工事はコロナの春に完了しましたが、まだまだ本格オープンはできずにいます。

この建物も築100年余り。私達の生活に馬が大きな役割を果たしていた頃から建っています。

現存する最古の木造厩舎として登録有形文化財に指定されている貴重な建物です。

でも、初めてこの建物を訪れたときは、たくさんの馬と人が出入りしていた当時の面影はありませんでした。

その眠っていた厩舎を、令和の時代にふさわしい姿で再生にはどんなデザインが必要か。。。

それは単なる腐朽を修理するのではなく、時間が刻まれたものを再生して「魅せる」デザインが必要だと考えました。

当時の歴史と文化を伝えつつ、現代らしく空間を使うことで、これから新たに刻まれる時間が未来へとつながっていきます。

それは、「弘前レンガ倉庫美術館」と共通するところです。

レンガの壁を現代の技術を駆使して補強、修復したように、この曲屋も新しい耐震壁を加え、古い柱を巧みに補修しました。

かつて応接室で使われていた大テーブルは、磨かれて美しい木目とともに蘇りました。

今回の曲屋では、このような「新」と「旧」が共存する姿を多く見ることができます。

まだまだ本格オープンとはいかない今だからこそ、引続きひとつひとつご紹介していきたいと思います。

ーーー

日本では、ひとつの時代の役割を終えて取り壊される建物がほとんどです。

今回の曲屋やレンガ倉庫のように、生まれ変わって新しい時代を生きることができる建物は日本ではまだまだ少ないのです。

でも、よく見てみましょう。調べてみましょう。

じっくり考えると、見えてきます。

その場所にしかない、その空間に受け継がれてきたものが。。。

そこから見えたものの先にあるデザインが、未来へつづくように。。。

曲屋KANEKO 青森県上北郡七戸町 2020年